私たちの想い

代表挨拶

はじめまして。「こしのくに里山再生の会」代表の松平成史です。2018年に、U ターンで福井市殿下地区に移住してきて、自伐林業を始めとした様々な事業を手がけています。自伐 ( 型 ) 林業とは、近年注目されている林業 style です。山林所有者などが自ら経営、管理、施業をしながら少人数で行う自営型の林業で、効率重視の「皆伐」(かいばつ)とは違い、「間伐」(かんばつ)という少量生産でありながらも、持続的な森林経営を成り立たせることができます。

ストーリー

東京暮らしへの疑問

私は大学を卒業後、東京で酒類業界に就職し、語学力を活かし、海外営業をこなすなど、充実した日々を送っていました。担い手不足の酒類業界で、好きな仕事に就けていることでの、やりがいと喜びを感じ、誇りを持って取り組んでいました。しかし、その考え方に変化が起き始めたのは、子供を授かった頃でした。東京での子育て。それは、子供の成長に喜びを感じる余裕がもてないほど、時間に追われた生活でした。待機児童が当たり前の都市部でやっと入園できたのは、13 希望目の保育園。自宅から遠く離れた保育園までの送り迎えは予想以上に大変なものでした。

寝かせる時間が迫中、夕飯とお風呂は慌てて済ませるといった生活。寝かせる時間が迫る中、夕飯とお風呂は慌てて済ませるといった生活。大人の生活リズムに、子供を無理やり合わせるという感覚になり、家族の心にゆとりがなくなっていくように感じました。「このままでいんだろうか」自問自答が続く日々でした。

自伐型林業との出会い

福井県福井市殿下地区は、私の故郷です。かつて、私の祖父は「皆伐」style の林業を営んでいました。祖父の山を現代のビジネスに合ったやり方で、受け継ぐことは出来ないか。そういった思いから、埼玉県の林業スクールに入学しました。そこで出会った林業こそ、「皆伐」ではなく、「間伐」で仕事を生む「自伐型林業」でした。

自伐型林業がなぜ現代に求められているのか。それは、

  • 稼げる林業であること
  • 森を守る事ができる林業であること

この 2 つが同時に叶う style だからです。

遡ること 80 年程前、私の祖父の時代は、大型の機械を利用した、皆伐が主流でした。皆伐とは、文字の通り、エリアの木をみんな一度に切ってしまう施業の方法です。全部まとめて切ってしまうので、伐採した材を運ぶときにも他の木に邪魔されず、かかり木などの心配も比較的少ないので、作業の効率は高くなります。しかしながら、皆伐を行うと、苗木が育つまでの間に土壌が弱まり、生物多様性が失われ、環境破壊につながる施業のやりかたではないかという疑問の声が上がっていました。

皆伐後の再造林を目指すため、人々は密度を高くして木を植えていきました。(が、その後放置され)そのことにより現代で何が起こっているか。狭い中でぎゅうぎゅうに埋められた苗木は光の奪い合いをして成長が遅くなってしまいます。なおかつ、光が当たらないことで地盤は弱り、大雨などでの土砂災害などをもたらしています。「森に手を加えない事 = 山が危険にさらされている」一見、矛盾に聞こえるワードかもしれません。しかし、皆伐後の人間の行いが、森にダメージを与え、さらに土砂災害を引き起こし、人間の生活をも脅かす結果となっています。

「里山再生の会」結成と U ターン決意

間伐で一番大切なこと。それは、木材を搬出するための道を作れるようになることです。壊れにくくて、山も壊さない道を、いかに環境を激変させずにつくれるかが重要で、そこからどの木を間引けばいいか、判断する力をつける必要があります。とても一人ではできません。私は、林業スクールで出会った仲間に「一緒に間伐をしませんか」と声をかけました。後に、「里山再生の会」を結成するメンバー達です。私の故郷に戻ればたくさんの杉の木があります。でもスクールのメンバー達は、都市部の出身のため、林業に興味があっても山がありません。私たちは話し合って、仕事を掛け持ちしながらも長期休暇を利用し福井に集合。「間伐」をして実践を重ねました。そしてついに東京を離れる決意をします「間伐」を始めてから約 1 年後のことです。スクールメンバーの I ターンも実現し、福井在住の仲間が増えていきました。

林業のこれから

林業というと、「二束三文」で「危険」なイメージがまだまだあるかもしれません。でも、これからの林業は、「稼げる」「山林を守れる」「持続可能な職業である」ことを、まず殿下地区の方々に知ってほしいと思っています。殿下も捨てたもんじゃない、田舎には魅力があることを再発見してほしいです。地方からの発信が広がることで、都市部からの移住者が増えてくれることも期待したいと思っています。林業って、「やってみたら楽しい」ということをより多くの人に知ってもらえたら。理解し合える仲間が増えてくれることを信じ、今後も活動を続けていきます。